〜言葉・文化・食べ物、そして人間関係まで〜
私はアメリカのシカゴからカナダのトロントに移り、現地で就職しました。どちらも英語圏で隣国だから「そんなに大した違いはないだろう」と思っていましたが、実際にカナダで働き始めてみると、意外な発見と戸惑いの連続でした。今回は、カナダ生活の中で私が体験したカルチャーショックについてご紹介します。
あれ?英語のスペルが違う!?
日本の学校で習った英語はアメリカ英語が中心ですが、カナダではイギリス英語の影響が色濃く残っており、スペルに違いがあります。
例えば「色」は、アメリカでは、“color” ですが、カナダでは“colour” “center”(中心)も“centre” と書かれます。
私はシカゴに住んでいたので“check”(小切手)というスペルに慣れていましたが、カナダでは“cheque” と書かれていて、改めてスペルの違いを実感しました。
最初は書き間違いかと思ったほどですが、職場のメールで何度も目にするうちに「これがカナダ流なんだ」と気づかされました。
Microsoft Wordのスペルチェックにも「カナダ英語」という設定があり、自分の知っているスペルが赤く訂正されるのを見て、「ここはアメリカではなくカナダなんだ」と実感したものです。

“Eh?”(エイ?)って何?
カナダ独特の口癖に「Eh?(エイ?)」という表現があります。何かを確認したり同意を求めるときに文の最後につけるもので、「It’shot today, eh?(今日は暑いよね?)」という感じで使います。アメリカではこの「Eh?」の代わりに、「right?(でしょ?)」や「youknow?(わかるでしょ?)」などがよく使われます。
今では聞くたびにカナダ人らしさを感じて親しみを覚えるようになりました。
こうした言い回しの違いは他にもあります。アメリカでは「bathroom」や「restroom」と言うトイレを、カナダでは「washroom」と呼ぶのが一般的です。初めて聞いたときは「洗面所のこと?」と思ってしまいました。
また、郵便番号の呼び方も異なります。アメリカでは「ZIPコード」と呼び数字のみで表されますが、カナダでは「ポスタルコード」と呼び、アルファベットと数字が交互に並ぶ形式(例:M5V2T6)になっています。カナダではこれを「エム・ファイブ・ヴィー」のようにアルファベットを正確に発音して伝えるため、初めて聞いたときは「ややこしいなぁ。」と戸惑いました。
さらに、アメリカで「College(カレッジ)」と言うと、カレッジの後、四年制の大学を指すことが多いのに対し、カナダでは「College」は職業訓練を目的とした2年制の専門学校のことを意味する場合が多く、四年制大学は「University」と呼ばれます。
えっ、スーパーでお酒が買えない!?
カナダ・オンタリオでの驚き体験
アメリカでは、日本と同じように、スーパーやコンビニの冷蔵庫にお酒が並んでいて、気軽に買うことができます。ところが、オンタリオ州に行くと、そのルールが突然変わり、戸惑いました。オンタリオ州では、ワインやビールを買うには「LCBO(LiquorControl Board of Ontario)」や「TheBeer Store」など、州が管理する特別な店舗に行かなければならず、スーパーでは基本的に売っていません。しかも、購入できる時間や曜日にも制限があり、「カナダはお酒に対してこんなにも厳しいのか」と驚いたのを覚えています。このように、アメリカとカナダは似ていると思っていても、思わぬところで文化の違いを感じることがあります。

食文化の多様性
食事面でも多くの発見がありました。カナダでは朝食にベーコンや卵、昼食はサンドイッチとスープ、夕食は肉とポテトが定番です。さらに街中には中華、インド、メキシコ、ベトナム料理など世界中の料理店が並んでおり、多様な文化が共存していることを実感しました。
アメリカにも住んでいたので様々な国の料理があること自体には驚きませんでしたが、カナダの方がより一層、外国人や外国の文化・料理に対して関心が高く、受け入れられていると感じました。特にトロントやバンクーバーなどの大都市では、多様な文化背景を持つ人たちが自然に共存し、それぞれの食文化が日常の一部になっているのが印象的でした。
ただし外食は高く、チップの習慣もあるため、最初は戸惑うこともありました。
人との距離感の違い
カナダ人はとてもフレンドリーですが、日本人のような「空気を読む文化」とは異なり、はっきりと意見を言います。誰かが具合悪そうにしていたら「Areyou okay?」とすぐ声をかけてくれますが、自分の意見も率直に伝えるのが普通です。
また、通りすがりの初対面の人でも「Hi!」と笑顔で話しかけてくれるのは新鮮でうれしい反面、どう返していいか分からず戸惑うこともありました。

意外とみんな適当!?
日本では時間をきっちり守ることが重要視されますが、カナダでは少しゆるい面があります。約束の時間に遅れてくる人も多く、「Sorry,traffic!(渋滞で)」と軽く言って済まされることもしばしばです。また、役所や病院の予約時間に行っても30分〜数時間以上待たされるのは珍しいことではありません。
さらに驚いたのは、「今日は雪だから行かない」と仕事を休む同僚がいることです。大雪のときに公共交通機関が止まったり、道路が危険な状態になるのは理解できますが、「えっ、そのくらいで?」と思ってしまうこともありました。
最初は「こんな事あり?」と思いましたが、「これがカナダの普通」と受け入れ、心を広く持つことを学びました。完璧を求めすぎず、柔軟に対応する姿勢は、ある意味とても生きやすさにつながっているように感じます。
終わりに
カナダでの生活は最初は驚きの連続でした。以前にアメリカに住んでいたことがある私でも、カナダに来てみるとまた違った文化や価値観に出会い、多少のカルチャーショックを感じる場面もありました。しかし、その違いに戸惑いながらも「違いを楽しむ心」を持てるようになってきたと思います。
日本とカナダ、どちらが良い・悪いではなく、「文化の違いを知ること」は自分の視野を広げる大きな一歩です。これからも日々の小さなカルチャーショックを色々楽しみながら、カナダ生活を続けていきたいと思います。